前回は総合型選抜の【傾向と対策】について紹介しました。今回から【実践編】とし、実際に総合型選抜で合格した先輩たちが高校時代にどんなことに取り組んできたのかを3回にわたって紹介します。同じことをする必要はありませんが、合格者の姿勢を知ることで、総合型選抜で受験生に何が求められているのかがよくわかるのではないでしょうか。第1回は、早稲田大学創造理工学部建築学科に合格した影山舞さん(宮城・県立高校出身)です。
積極的に創作&課外活動を行っていた結果、総合型選抜を目指す
もともと、ものづくりが好きだった影山さんは、東日本大震災で被災した経験から、建築に興味がありました。高2の夏に「早稲田建築AO入試(創成入試)」の存在を知り、「これまでの自分の経験や部活動での実績を受験に生かせる」と、その秋に受験を決意しました。
「東日本大震災が起こるまで、建築物が災害から守ってくれるという認識がありましたが、実際には避難できる家があるから大丈夫という安心感が命を奪ってしまった事例がありました。建築物を絶対視する考え方をなくしながら、防災と建築の関係性を見直したいと思ったのです。早稲田大学には建築分野でも幅広い専門をもつ先生が揃っています。建築工学や材料、意匠設計など多角的に学びながら自分の幅を広げられると思って志望しました」
そんな影山さんは、中学・高校時代ともに美術部で部長を務め、リーダーシップをとりながら、自分の表現力を磨くことに注力していました。個人的な創作活動で終わらず、映像制作のコンクールや英語でプレゼン等を行うプログラムへの参加、土木学会での復興に関する発表、校内の各種イベント制作物を担当するなど積極的な活動は、総合型選抜を目指す以前から行っていたのです。これは、後に中学・高校時代の継続性のある実績・意欲として提出書類の中で生かされます。
体験が豊富なだけではダメ!大学での学びに結びつける作業が必要
申し分のない実績をもつ影山さんですが、実は出身高校で「早稲田建築AO入試」で受験した例がなく、身近で総合型選抜に関する情報が十分に得られませんでした。そこで、高2の11月から塾を頼ります。塾の指導を受けながら、まず取り組んだのは自分のやりたいことをまとめることでした。
「やりたいことが多過ぎたので、実際に大学で何をしたいのかをピックアップし、その中からフォーカスすることから始めました。けれど何度も迷走し、はっきりフォーカスできたのは受験直前の高3の夏でした」
最初は、「心地よい空間」を研究テーマにしようと考えていたそうです。ただ、それは「自分でなくてもできる薄っぺらな内容だった」と影山さんは振り返ります。そんな影山さんの転機は、塾で受講した「建築芸術系講座」で訪れました。
建築業界に関わる社会問題や世界情勢、建築デザインの実際など多岐にわたる情報を得た影山さんは、自分のやりたかったことの点と点が結びついていくことを実感します。
「防災という言葉は、普遍的ながらありふれていますよね。その防災で自分にしかできないことを探そうと思った時に、いろいろな知識がないと自分らしさが見つけられないと思いました」
とはいえ情報を吸収するだけでなく、何度も考えて咀嚼(そしゃく)し、文章化したり人と対話したりしてアウトプットする、それを繰り返さないといけませんでした。
また、影山さんの課題は、ものごとを説明する時にまわりくどくなってしまうことでした。簡潔に伝えるために、短い文章にまとめる訓練をし、まとめ方の「型」を感覚的に身につけたそうです。
総合型選抜での受験を通して自分と向き合い、自分でもわからなかった内面や得意なことなど気づきがたくさんあったという影山さん。
「大学でそれらを生かして何をやりたいのかを明確にすることができました」と笑顔の影山さんですが、大学に入った今、やりたいことは現在も形を変え、増殖中です。
影山さんの合格ポイント
●やりたいことの中に自分らしさを見つける●あらゆる実績・体験を自分の能力の根拠とする