総合型選抜の対策について、3回にわたってお届けする【実践編】では、実際に総合型選抜で合格した先輩たちの高校時代の取り組みについて紹介しています。先輩の足跡を参考に、自分にもできそうなエッセンスを抽出してみましょう。第2回は、慶應義塾大学環境情報学部(以下慶應SFC)に合格した板谷佳琳さん(東京都・私立高校出身)です。
興味のおもむくまま活動し、「一番やりたいこと」を見きわめる
「都市開発」に関心を持っており、それに加えて好きな数学を生かした「データを使った学問」に興味がありました。さらに新体操をしていた経験から「スポーツ系の学部もいいな」と志望校を決めるまでは、「やりたいことがたくさんある!」と、学内外のプログラムや各種コンテストにいくつも参加します。
「MONO-COTO INNOVATION」(株式会社CURIO SCHOOL主催)には、高1、高2と2年連続で挑戦。1度目は最終審査に残ることができませんでしたが、その反省を踏まえて、2度目の挑戦では親子を見守るマークをデザインしてプレゼンテーション。その結果、見事優勝しました。
活発に活動する板谷さんですが、高校受験の経験から入試には辟易(へきえき)していたそうです。「ペーパーテストは自分に合わない」と思っていた板谷さんが、総合型選抜のことを知ったのは高1の時。その夏には総合型選抜に強い塾に入ったそうです。
そんな塾や高校で開催されるプログラムの中から、以前から関心のあったデータサイエンスやまちづくりに関するものを選択して受講した板谷さん。専門家の講義やフィールドワークに刺激を受けます。好きなことを追究する中で、自分はやはりデータサイエンスと都市デザインを合わせたことをやりたいのだと気づき、高2の冬からそれが学べる慶應SFCを目指します。
探究活動では自分だけのオリジナリティを大切に
こうした経歴だけでも勝負できそうですが、板谷さんは自分で納得する探究学習を独自にすることを選びます。目をつけたのは、6年間住んでいたことがある香港の建物でした。
「おもしろい建物が混在しているのに、全体としてきれい。そもそも、まちづくりに興味をもったのも香港がきっかけだったんです。ただ、香港の建物についてどう探究するかに迷いがあり二転三転。方針が固まったのは高3の7月でした。そこからデータ分析をし、大学で学びたいこととすり合わせながら、大学に提出する資料をつくりました」
ギリギリでも、高1から塾で小論文対策をしていたことが力になりました。また、目を通した論文は30本以上。そんな探究活動で気をつけたことがあるそうです。それは、これまでに探究されてきたものと似通った内容にしないことでした。
「誰かと同じ論文を引用したら、似てしまいますよね。そのため、自分の原体験を大事にすることを意識しました」
そんな板谷さんが活用したのが、自分で撮りためた香港の写真です。実際の写真を用いた建物の分析に、オリジナリティを感じさせる探究が、板谷さんを合格に導きました。また、これまで体験したプログラムやコンテストで得た知見をまとめた提出資料も、彼女の軌跡や探究への欲求を証明してくれるものとなったのは間違いないでしょう。
「総合型選抜は、自分の『好き』を突き詰めた先にあるものです。自分を見つめ直すきっかけになりますが、それは社会に出ても必要な力でしょう。考えることが好きで、日常的に問いがすぐにわく人に向いている入試だと思います」
慶應SFCでは、1年生の秋学期から研究室に入れるそうです。入学前から行きたい研究室がある板谷さんは、今からワクワクが止まりません。
板谷さんの合格ポイント
●興味あることに何でもトライして「本当の好き」を発見●自分が実際に見たもの、体験したことを大事にする