留学には憧れるけど、どう実現すればいいのか分からない。そんな人のための道しるべとなるインタビュー。西オーストラリア州政府 駐日代表部の遠山桃子さんにお話をうかがいました。
西オーストラリア州政府駐日代表部ってどんなところ?
遠山さんがお勤めの西オーストラリア州政府駐日代表部は、どんな業務を行っているところなのですか?
名前を聞いてもピンとこない方が多いかもしれないですね。オーストラリア大使館とは違うものなの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。 オーストラリア大使館はオーストラリアの連邦政府全体を管轄する機関で、そのもとに各州政府ごとの駐日代表部があり、州の情報を発信しています。
有名なところではオリンピックが開催されたシドニーがあるニューサウスウェールズ州、メルボルンがあるビクトリア州、観光地として有名なゴールドコーストやブリスベンがあるクイーンズランド州などがあり、私がいるのは州都にパースを擁する西オーストラリア州の駐日代表部です。日本でいう府とか県のようなものと考えていただければ分かりやすいと思います。
われわれは主に州都パースに関する情報を発信する立場にありますが、他の州のことはまったく関知しないというわけではなく、他の州とも共同体制で仕事をすることにより情報を共有しています。
写真:西オーストラリア州都 パース
例えば教育の分野でいいますと、オーストラリア全体の教育を盛り上げるためのイベントをオーストラリア大使館や他州の駐日代表部とともに開催し、それぞれの州の魅力を知ってもらうような試みを行っています。
よく「観光局とは違うの?」とも聞かれるのですが、西オーストラリア州政府 観光局は別にあります。ざっくりいってしまえば、ここは観光以外のすべてを管轄しているところですね(笑)。
なるほど。業務は多岐にわたりそうですが、遠山さんのご担当は?
私は主に教育分野を担当しています。また、分担している仕事の中では、農務、食品、資源に関することも担当しています。
西オーストラリアは非常に資源が豊かな州で、オーストラリア全体の年間消費量をほぼすべてまかなっています。
先日、安倍首相がオーストラリアを訪問した際、オーストラリアのアボット首相と首都のキャンベラで対面した後、向かった先が西オーストラリア州の鉄鉱石採掘エリアでした。
日本は、オーストラリアにとって鉄鉱石と天然ガスの最大の輸出相手国なのです。日本とオーストラリアは経済的なつながりがとても強いのですよ。
資源があることで西オーストラリア州は豊かです。州都のパースも街の規模としてはシドニー、メルボルン、ブリスベンに続く4番目ですが、平均年収は日本円にしておよそ850万円と非常に高くなっています。そんなパースの教育サービスを日本に紹介するのも大きな仕事の1つです。
海外で学びたいと思っている人たちをパースに案内するお仕事ですね?
そのとおりです。ただ、留学を希望されている方々に個別にお会いするのではなく、留学希望者が所属する学校の先生や、民間の留学エージェントの方にパースの魅力をお伝えして「ぜひご紹介ください」とアピールするのが仕事です。
現在の仕事の原点となったパース留学
遠山さんご自身もパースへの留学経験がおありなのですよね?
そうなんです。大学を卒業した後、いったんは日本で就職したのですが、社会人になってなってから初めて英語の必要性に気づかされ「なんでもっとまじめに英語に取り組まなかったのだろう」という後悔とともに「もしかしたらこれからできることがあるんじゃないか」という思いもあり、留学を考えるようになったのです。
そこから、社会人をしながらお金を貯めて留学しました。そのときに選んだのがパースでした。
中高生のころから「いつかは留学したい」と考えていたわけではなかったのですね。
ぼんやりとは考えていました。中学生のとき、学校主催の夏休み短期留学でカナダを訪れ、同級生と寮に泊まって生活したのですが、現地の家庭との交流を通じて感じたのは自分の英語力のなさで、楽しかった反面、絶望感もすごくあったのですよ。
それを肥やしにして頑張れればよかったのですが、そのときは別のことに興味が移って、次に英語力の必要性を感じたのは社会人になってからでした(笑)。
同じように、社会人になってから英語を必要としている方はとても多いと思います。留学までにどのような準備をされましたか?
当時の自分のレベルでは留学してもついていけないんじゃないかと考え、渡航する数ヵ月前から英語学校に通いつつ、プライベートで英語を教えてくれる外国人にカフェで習ったりしました。もちろん完ぺきとはいきませんが、それである程度の自信はつけられたと思います。
留学に際して試験のようなものはなかったのですか?
学校によっては英検やIELTSの一定以上のスコアを求められるところもありますが、私が入った語学学校はなく、入学してからプレイスメントテストという、語学レベルに応じてクラス分けするためのテストを受けました。
期待と不安が入り交じるスタートですね。
ドキドキでした。初めての長期の海外生活でもあったので。
最初は英語力が高くなかったので基礎的な勉強から始まりました。ジェネラルイングリッシュと呼ばれる一般的な英語ですね。そこからだんだんレベルアップし、クラスも「インターミディエイト」や「アドバンス」といった上級のクラスに上がっていきました。
最終的にはIELTSを受験するためのコースに進みました。自分の英語力がどのくらい上がったのか、最後に何かの形で証明したくて。
毎日、同じような生活を続け、同じような授業を受けている分には、自分の英語力は使えるものになっていると思っても、数値化したらどうなのだろうかと。
IELTSで高い得点が取れれば励みになるだろうし、得点が奮わなければもっと頑張ろうという気持ちになれるだろうと思ったのです。
その結果は手応えのあるものでしたか?
そうですね。自分でもスキルアップしたのを感じていました。これはパースという街を選んだことも大きく関係しています。パースは、ほかの都市に比べて日本人がすごく少ないのですよ。
語学学校における日本人の割合は、ほかの都市なら10%でも少ないといわれるくらいですが、パースだと6%程度です。
私が通っていた時期も、キャンパス内で見かけることはあっても同じクラスにはいなかったですね。そうすると必然的に英語でしかコミュニケーションしなくなります。
否応なしにスキルアップするような環境ですね!
そうなんです(笑)。どんなことでも英語で表現しなければならない環境でした。しかも、留学生同士なのでお互い片言で必死に伝えようとするんですよね。これですごく伸びたと思います。
また、留学生同士のコミュニケーションの利点として「恥ずかしくない」ということもあると思います。 私の場合はそうだったのですが、相手が英語のネイティブスピーカーだと緊張してしまうんですよね。この発音で理解されるのだろうか?とか、「え?」って聞き返されたら心が折れそうだとか。そんなことを考えてしまってうまく話せなかった。
でも、相手が留学生なら英語が母国語じゃないという土俵は同じ。ちょっと理解されなくても頑張って理解してもらおうと思えるし、たぶん向こうもそう思っている。
同じアジア圏から来ている人でも、日本とそうでない国は英語のしゃべり方の特徴が違っていて、そういうものを聞き分ける力も身に付きました。
日常のすべてが学びの機会ですね。
スラングや地元ならではの言い回しなど、学校で習わない言葉は、友達とお茶を飲みに行ったり食事に出かけた先で地元の人に教えてもらったりしましたね。「オーストラリアではバーベキューのことをバービー(Barbie)って言うんだよ」とか。
言葉だけでなく生活習慣でも学ぶことが多かったです。例えば……ベジマイトってご存じですか? オーストラリアではポピュラーな、パンに塗る塩辛いペースト状のものなのですが、私これの食べ方を知らなくて、パンにたっぷり塗って食べたらびっくりするような味で(笑)。
本当はバターを塗った上に少しだけつけて食べるようなものなのです。これはホームステイ先のホストファミリーに教えてもらいました。 ほかにも、現地でのバスの乗り方だとか、留学しなければ身に付かなかったと思えるものはたくさんありますね。
(次回に続く)
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遠山 桃子 (とおやま ももこ)
埼玉県所沢市出身。日本での社会人経験を経て、オーストラリアのパースへ留学。その後同じオーストラリアにてワーキングホリデーを経験、そして現地で就職。オーストラリア在住歴は計10年。日本に帰国後は、東京のインターナショナルスクール勤務を経て、現職の西オーストラリア州政府 駐日代表部に勤務。自身が経験した留学地としてのパースの素晴らしさをPRしている。最近は2児の母親として日々奮闘しながら、保護者の立場から考える若い世代への国際教育について高い関心を持っている。
英語圏大使館 合同留学フェア 2015
英語圏を代表する5か国(アメリカ/イギリス/オーストラリア/カナダ/ニュージーランド)の大使館・公的機関や日本国内の留学専門団体が明治大学に集まり、海外留学を希望する方々に留学についての最新情報を提供します。
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オーストラリア留学フェア 2015
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