パースに魅了され、愛し続ける西オーストラリア州政府 駐日代表部の遠山桃子さん。その魅力はどこにあるのか。留学希望者へのメッセージとともに語っていただきました。
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帰国後も熱い思いを抱き続けたパースの魅力とは
遠山さんにとってパースの魅力はどんなところにあるのでしょうか?
個人的なことでいうと、一番最初に降り立った地であり、そこで一番苦労もしました。英語の面でも苦労したし、生活の面でも苦労した。今は笑って話せますけど、泣いたこともあったと思います。そういうつらい経験をしたところだから強く印象に残っているというのはあるでしょうね。
でもそれだけではないです。5月に出張で2週間パースに行きまして、併せて休暇を取ってシドニーにも行ったんですよ。
シドニーは6年ぶりかな? あそこにも長い間住んでいたし、素晴らしい街なのですが、自分はやはりパースが好きなんだということをあらためて感じさせられました。
その要因の1つとして日本人の少なさがあるなと思いました。シドニーは日本の企業も多く、日本人の数も多い。ときどき、私はどこにいるんだろう? ここは日本ではないのか?と錯覚してしまうような瞬間もありました。 その点、パースにおける日本人の少なさは自分にとって居心地のいいものでした。オーストラリアを体感できた街だなと。
シドニーでは日本人に甘えようと思えば甘えられる環境でもあったのですが、パースではそれはなく、現地に溶け込む努力をして、オーストラリアそのものを楽しむ方法を見つけるための行動ができた。
それは留学によって現地の文化を肌身で感じたいと考える人にとっては重要な要素だと思います。ところで、シドニーとパースはずいぶん距離も離れていますよね?
飛行機で5時間、しかも時差もあります。どこかへ旅行に行こうと考えたとき、シドニーの人は時差を超えてパースに行くよりバヌアツに行く方が早かったりしますし、パースの人にとってはシドニーに行くよりバリの方が近かったりします。
それだけ離れていると人々が持っている意識も違うのではないかと思いますね。また、パースはオーストラリア第4の都市ですが、上位3つはすべて東海岸です。そんなことからも独特の雰囲気が生まれているのかも。
独自の文化や意識が育まれていそうですね。
冗談で「独立してもやっていける」と言われるくらい、大きな土地と豊かな天然資源があり、経済力もあります。
そんな彼らが目指しているのはシドニーやメルボルンのようになることではなく、第4の都市として成長し続けながらもバランスを保った都市であろうということ。
8年ほど前、ある州民選挙が行われました。主要な議員を決める投票と併せて、小売店の営業時間に関する投票が行われたのです。 オーストラリアの小売店の営業時間は9時から17時というのが一般的です。シドニーなどの大きな都市だと週に1回、21時まで開いている「Late Night Shopping」というものを設けていたり、週末も開いていて当然なのですが、パースでは週末にやっているお店は少なく、大きなスーパーやデパートも土曜日の午前中だけとか。
経済的な成長が著しく、上場企業の進出も増え、人口も増加している中で、果たしてこれでよいのだろうかということが投票で問われたのです。土日も店を開けて活性化すべきか否か?
どうなりました……!?
否決されました。
そうなんですか!?
そうなんですよ! われわれはこのレベルでいいんだと。それをやってしまうと消費にばかり時間を充ててしまうのではないかと。
行っていただくとよく分かると思いますが、パースの人たちは生活のバランスを大切にするんです。仕事とプライベートのバランスも、大きな都市では残業も当たり前ですが、パースだと17時にぴたっと終わります。
日照時間が長いこともあり、それからビーチに行ったりサイクリングしたりという楽しみ方をするわけです。もちろん、夜でもカフェやレストランが営業しているエリアもあり、そこでは週末の夜もにぎわっていますよ。
ワークライフバランスを大切にしているのですね。それでいて経済的にも豊かであるとはうらやましい限りです。
天然資源の恩恵を受けて経済が成長し続けたので、労働に対する賃金も高いですよ。アルバイトの時給も最低額が16オーストラリアドルなので日本円でいうと1500円くらい。週末だと3000円くらいになります。
再開発も7〜8年前から進んでいて、大きなところでいうとパースの市内を走っている鉄道を地下化したりとか。
街の南を流れる大きな川、スワンリバーの対岸には現在、シドニーのサーキュラーキーのような埠頭を建設中で、そこに高層マンションやホテル、レストラン、オフィスなどが集まってくる計画になっています。
ホテルでいうとウェスティンやリッツカールトンが入る予定です。リッツカールトンは一度オーストラリアから撤退したのですが、再進出の場としてパースが選ばれたのです。
賃金が高い分、物価も高いのですか?
確かにそういう面もあります。でも先日、出張で2週間滞在した個人的な感想としては工夫すれば苦労せずにすむかなと。お水など日常的に必要なものはお得なスーパーを利用するようにしたり。
市内中心部を走っている路線バスはすべて無料なので節約できる部分も大きいですよ。学生の場合は有料の交通機関でも学割が充実しています。パースでは6週間だけ通うような短期留学の学生でも現地の学生と同じ学割が受けられます。
パースは留学先としてオススメ
写真:© StudyPerth
留学先としてのパースは、どんなところが魅力でしょうか?
先ほど申し上げた私個人が感じている魅力とも通じるのですが、日本人が少ないことは留学生にとってはプラスだと思います。英語に集中できますからね。 ワークライフバランスを大切にするパースの人たちの生活習慣からも得るものが多いのではないでしょうか。
また、住民の温かさもありがたく感じるかもしれません。毎年、留学エージェントの方をお呼びして、パースの学校や生活環境を見ていただくのですが、皆さん口をそろえて「パースの人は優しいですね」とおっしゃいます。大きな都市にありがちな殺伐とした感じがない。初めて留学する方はいろいろと不安も大きいと思いますので、そういう部分もオススメできるポイントです。
この記事を読んでパースに留学したいと思う中高生も多いと思います。彼らはどういう準備をするのがよいでしょうか?
オーストラリアの歴史を、大体でいいので知っておくといいと思います。比較的新しい国なので学びやすいと思いますよ。歴史を知ってから訪れると、いろいろなものの見方も変わってきます。 例えばカンガルーは、なぜカンガルーという名前なのか?
もともとはアボリジニの言葉です。じゃあアボリジニというのはなに? 今はどこにいるの?というふうに興味を広げていってください。
勉強面でなにかアドバイスはありますか?
勉強面に関しては、中学校や高校で習う英語をしっかりやっていれば十分だと思います。教科書レベルで大丈夫。その先の、現地でコミュニケーションしようとする力が大事だと思います。使わなければ伸びないし、伝わらないので。
間違ってもいいし、発音がおかしくてもいいので、恥ずかしがらずにどんどん話すこと。知らない人でも「ハロー」って話しかけるくらいの積極性があれば、中学校や高校で習う英語で十分に乗り切れると思いますよ。
話すことによって、相手が言ってくる単語も覚えるんですよね。分からなければ「それはどういう意味?」と聞く。それは恥ずかしいことではなくて、それによって伸びるし、ボキャブラリーも増えるんだということを覚えておいてもらえれば。
なんだか、話しながら今の自分にも言えることだなと思えてきました(笑)。学校だけでなく、仕事の現場にも通用する考え方だと思いますね。
実践で身につけるわけですね。
どんなに準備しても100%にはなりませんし、スラングや現地ならではの言い回しなど分からなくて当然のものも多いです。学校の勉強だけしっかりやっておけば、あとは自然と身についてきますよ!
もしパースへの留学に興味がわいたなら、今年の11月8日〜9日に東京で開かれる「オーストラリア留学フェア2015」もチェックしてみてください。
パースをはじめとするオーストラリアの教育機関が50〜60校くらい集まって留学に関するセミナーを行ったり、留学希望者の質問や相談に応じます。 昨年、5年ぶりの開催にもかかわらず1000人を超える方にご来場いただいて関心の高さを感じました。今年は中高生向けに、保護者の方も含めて参加できるような形も検討しています。
オーストラリアは親子での留学も歓迎していて、例えば親御さんが大学院に行く場合、そのお子さんが公立高校の3年生までなら学費が無料になりますので、関心のある方はぜひ検討してみてください。
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遠山 桃子 (とおやま ももこ)
埼玉県所沢市出身。日本での社会人経験を経て、オーストラリアのパースへ留学。その後同じオーストラリアにてワーキングホリデーを経験、そして現地で就職。オーストラリア在住歴は計10年。日本に帰国後は、東京のインターナショナルスクール勤務を経て、現職の西オーストラリア州政府 駐日代表部に勤務。自身が経験した留学地としてのパースの素晴らしさをPRしている。最近は2児の母親として日々奮闘しながら、保護者の立場から考える若い世代への国際教育について高い関心を持っている。
英語圏大使館 合同留学フェア 2015
英語圏を代表する5か国(アメリカ/イギリス/オーストラリア/カナダ/ニュージーランド)の大使館・公的機関や日本国内の留学専門団体が明治大学に集まり、海外留学を希望する方々に留学についての最新情報を提供します。
開催日: 7/18 (土)
公式サイト: http://kbunsha.com/embassy/
オーストラリア留学フェア 2015
オーストラリアから60校を超える教育機関が来日。語学学校、小中高校、専門学校、大学・大学院、ワーキングホリデーなど、あなたの目的にあったオーストラリア留学がきっと見つかります。
開催日: 11/8 (日), 11/9 (月)
公式サイト: http://afuee.jp