文部科学省は4月6日、全国の高校3年生、中学3年生および中高英語教師の英語力等を調べた2017年度「英語教育実施状況調査」の結果を公表しました。
現在、「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4技能をコミュニケーションの手段として積極的に使える人材の育成を目的とし、英語教育の改革が進められています。
2013年度から実施されている同調査は、一連の教育改革の進捗状況を示し、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、さらなる英語教育の改善と充実に役立てるため実施されました。
東京五輪まであと2年となったこの時期に発表された本調査は、全国の高校生と中学生の英語力についてどのような結果を示しているのでしょうか。詳しく紹介していきます。
*2017年度「英語教育実施状況調査」…2017年12月1日時点のデータ。すべての公立学校を対象とし、教育委員会を通して実施されました。
高校3年生、4割が英検準2級以上の英語力
2013年に閣議決定された「第2期教育振興基本計画*」では、高校卒業段階で英検準2級から2級程度以上の英語力を身につけた生徒の割合を「50%以上」にすることを目標に掲げていました。
*「第2期教育振興基本計画」…対象年度は2013年度~2017年度。
本計画の最終年度となる2017年12月時点の調査結果では、英検準2級以上を取得している生徒の割合は「15%」。
検定未受験だが同等の英語力を有していると思われる生徒の割合「24.3%」を加えると、「39.3%」となります。
2016年度の「36.4%」よりも「2.9%」上昇しているものの、政府目標の「50%」には到達できませんでした。
英検準2級以上の英語力を有する高校3年生の割合 | |
---|---|
2013年度 | 31.0% |
2014年度 | 31.9% |
2015年度 | 34.3% |
2016年度 | 36.4% |
2017年度 | 39.3% |
中学3年生では、4割が英検3級以上の実力
中学生の英語力については、卒業段階で英検3級程度以上の英語力を有する生徒の割合「50%以上」を2017年度までに達成することが目標とされていました。
調査結果では、英検3級以上を取得している生徒の割合は「22%」。同等の英語力を身につけている生徒の割合「18.7%」を足すと「40.7%」となり、こちらも、目標には届きませんでした。
英検3級以上の英語力を有する中学3年生の割合 | |
---|---|
2013年度 | 32.2% |
2014年度 | 34.6% |
2015年度 | 36.6% |
2016年度 | 36.1% |
2017年度 | 40.7% |
英語担当教師の英語力は?
計画では、英検準1級程度以上の英語力を有する英語担当教師の割合を、高校では「75%以上」、中学校では「50%以上」とすることを目標に掲げていました。
結果は、高校で「65.4%」、中学校で「33.6%」。ともに過去5年間で右肩上がりで上昇を続けていますが、目標には届きませんでした。
都道府県別に見ると、高校では、英検準1級程度以上の英語力を有する教師の割合1位は福井県と香川県で「91.3%」。中学校では福井県が1位で「62.2%」。福井県は、高校、中学校、それぞれの英語教師ですべて1位という結果が出ました。
都道府県別 英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合 (高校) | |
---|---|
2013年度 | 52.7% |
2014年度 | 55.4% |
2015年度 | 57.3% |
2016年度 | 62.2% |
2017年度 | 65.4% |
都道府県別 英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合 (中学校) | |
---|---|
2013年度 | 27.9% |
2014年度 | 28.8% |
2015年度 | 30.2% |
2016年度 | 32.0% |
2017年度 | 33.6% |
福井県が各項目でトップを独占
これまでに紹介した下記4項目に関して、都道府県別ランキングを見てみると、すべて福井県が1位でした。「英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合」(高校) については福井県と香川県が同率1位。
- 「英検準2級以上の英語力を有する生徒の割合」(高校)
- 「英検3級以上の英語力を有する生徒の割合」(中学校)
- 「英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合」(高校)
- 「英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合」(中学校)
「英検3級以上の英語力を有する生徒の割合」(中学校) が前年の「46.5% (3位) 」から「62.8% (1位) 」へと大幅に伸びた点について、「県立高入試の英検加算制度導入により3級以上の取得者が増えたことが主な要因」としています。
さらに、福井県義務教育課の「コミュニケーション重視の授業で生徒が力を付けてきたことが土台にある」とのコメントを紹介しています。
都道府県別 英検準2級以上の英語力を有する生徒の割合 (高校) | ||
---|---|---|
1位 | 福井県 | 52.4% |
2位 | 富山県 | 49.1% |
3位 | 兵庫県 | 45.3% |
4位 | 神奈川県 | 45.2% |
5位 | 千葉県 | 44.9% |
都道府県別 英検3級以上の英語力を有する生徒の割合 (中学校) | ||
---|---|---|
1位 | 福井県 | 62.8% |
2位 | 東京都 | 51.6% |
3位 | 石川県 | 50.2% |
4位 | 秋田県 | 49.1% |
5位 | 千葉県 | 48.9% |
都道府県別 英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合 (高校) | ||
---|---|---|
1位 | 福井県・香川県 | 91.3% |
3位 | 石川県 | 89.3% |
4位 | 宮崎県 | 85.1% |
5位 | 佐賀県 | 84.8% |
都道府県別 英検準1級以上の英語力を有する英語担当教師の割合 (中学校) | ||
---|---|---|
1位 | 福井県 | 62.2% |
2位 | 徳島県 | 49.6% |
3位 | 東京都 | 48.0% |
4位 | 富山県 | 46.9% |
5位 | 石川県 | 44.8% |
英語力上昇の要因、ふるさとを英語で紹介など
調査結果では、「英語力の上昇率が高かった教育委員会」と「英語力の上昇率が高かった教育委員会の取組例」も紹介されています。
英語力の上昇率が高かった教育委員会 (高校) | |||
---|---|---|---|
1位 | 愛媛県 | 30.6% → 40.8% | 10.2ポイントUP |
2位 | 山形県 | 36.0% → 44.2% | 8.2ポイントUP |
3位 | 岡山県 | 36.6% → 44.5% | 7.9ポイントUP |
4位 | 福井県 | 44.8% → 52.4% | 7.6ポイントUP |
英語力の上昇率が高かった教育委員会 (中学校) | |||
---|---|---|---|
1位 | 福井県 | 46.5% → 62.8% | 16.3ポイントUP |
2位 | 熊本市 | 36.8% → 51.3% | 14.5ポイントUP |
3位 | 大阪市 | 38.9% → 52.2% | 13.3ポイントUP |
4位 | さいたま市 | 45.8% → 58.9% | 13.1ポイントUP |
生徒の英語力の上昇率が高かった教育委員会の取組例
- 生徒の英語力を評価し、指導改善に生かすため、外部試験を導入
- 県独自の資料、検証テストの作成・実施及び好事例等の共有・周知
- 定期試験を改善したり、パフォーマンステストを導入したりするなど、生徒の英語力もきめ細かく把握するよう、市町村教育委員会を指導
- 学校ごとに目標設定をし、PDCAサイクルで生徒の英語力向上につなげる取り組みを実施
- 「英語の授業はできるだけ英語で」「生徒のコミュニケーション体験を豊富に」「意見や考えを英語で伝え合う授業を」といったキーワードをもとに、各学校の実態に応じた授業改善を継続
- ふるさとを英語で紹介する授業を取り入れ、修学旅行先で出会った外国人を相手にその成果を確かめたりするなどの活動を実施
東京オリンピックまであと2年となりました。
2018年4月から始まった「第3期教育振興基本計画」(2018年度~2022年度) では、小学校の中学年 (3年生~4年生) で「外国語活動」、高学年で「外国語科」が導入されるなど、新学習指導要領 (2017年3月公示) がいよいよ段階的に実施されていきます。
今回の調査結果では、生徒、教師ともに目標を到達できませんでしたが、英語力は過去5年間で右肩上がり上昇を続けています。
外国人指導助手 (ALT) を活用した授業の時間数の割合も中学校では21.9% (2016年度は21.5%)、高校では10.8% (2016年度は8.7%) と増えています。
今後は、英語力に対して、これまで以上に結果が問われていくことが予想されますので、日々の学習を怠りなく進めたいですね。
文部科学省|平成29年度「英語教育実施状況調査」の結果について