第10回:英語で聞く力を高めよう

本多 敏幸(ほんだ・としゆき)

私たちが情報を得る手段に五感(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる)があります。英語の学習では「見る」(=読む)ことが主と思われがちですが、相手とのスムーズなコミュニケーションには「聞く」ことも大切です。今回は、聞く力を高める学習方法を紹介します。

第10回:英語で聞く力を高めよう

 

 

聞くことが苦手な人は…

 

聞くことと読むことは、どちらも情報をインプットする手段です。しかし大きな違いがあります。それは、読むときには分からないところがあれば何度も読み返すことができますが、聞くときは同じ音声を再度聞くことはできないということです。

 

したがって、まずは音をキャッチすることが必要になります。そして、次に、キャッチした音から何を言っているのか(意味)を理解することが必要になります。

 

聞くことが苦手だと言う人には次のことが当てはまります。

 

① 音を認知する(キャッチする)ことができない。
② 単語の発音に慣れていない。
③ 音の変化に慣れていない。
(例:want toで最初のtの音が脱落し、[ワントゥ]のように発音される)
④ 語彙力や文法力の不足のために意味が理解できない。

 

このうち、④については聞いて理解できる単語の数を増やし、文法を学習することで克服できます。ここでは①~③を克服し、聞く力を高める学習法を紹介します。

 

 

 

その1 シャドーイングを行う

 

まず、「① 音を認知する(キャッチする)ことができない」の対策となる練習を紹介します。代表的な練習方法がシャドーイングです。

 

シャドーイングとは聞こえてきた音を間をおかずに(0.5秒くらいで)そのままオウム返しで繰り返して声に出して言う練習方法です。このとき、文字を見てはいけません。

 

音をキャッチする練習なので、習っていない語句が入っていてもOKです。インターネット上の音声で練習してもよいですし、教科書本文の音声をシャドーイングしてもよいでしょう。

 

教科書によっては、ウェブサイトで本文の音声を無料で聞けるものもあります。自分が習っていない教科書の音声で練習するのもよいでしょう。『中学 英語 教科書 本文 音声 ダウンロード』などと検索してみてください。

 

シャドーイングをしてみて、「簡単」と思う音声であれば、もう少し負荷をかけてみましょう。シャドーイングをしながら意味も考えてみます。「音を認知する」「オウム返しで声に出す」「意味を考える」と同時に3つのことを行うのはかなり大変ですが挑戦してみてください。

 

 

 

その2 音読を行う

 

音読は文字を音声化させる練習です。この連載の「第2回:英語に慣れて苦手意識をなくそう」で説明したように、音読はすべての技能の基礎力になります。音読練習をすることで、冒頭の「聞くこととは…」の「② 単語の発音」「③ 音の変化」に慣れることができます。

 

まずは、CDなどの音声を聞いて、1文ずつ正しく言えるようにしましょう。

 

次に、CDの音声と一緒に読んでみましょう。これはoverlapping(オーバーラッピング)やpaced reading(ペースト・リーディング)などと呼ばれます。音声と一緒に読むことで、音の変化を意識することができます。

 

よく「言えるものは聞き取れる」と言われます。普段から「音」を意識して学習するようにしましょう。

 

単語を覚えるときも、単語を見て意味が分かる、訳語を見て書けるだけを目指すのではなく、何度も発音することが大切です。

 

 

『英語力を伸ばす学習法』リストページ

https://www.ei-navi.jp/news/nobasu/list/

 

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この記事の筆者について

本多 敏幸(ほんだ・としゆき)

PROFILE

東京都の教員として38年間勤務。現在、千代田区立九段中等教育学校、都留文科大学、文教大学で講師として教えるほか、NHKラジオ「中学生の基礎英語レベル1」の講師として活躍。ELEC同友会英語教育学会会長。学習指導要領の改訂に関わる。また、全国各地で教員向けの講演を行っている。
著書に、本多式中学英語マスターシリーズとして『反復基礎』『短文英単語』『速読長文』(以上文藝春秋)、『中学校外国語新3観点の学習評価完全ガイドブック』、『入試英語力を鍛える!授業アイデア&パワーアップワーク40』(以上明治図書)、『若手英語教師のためのよい授業をつくる30章』(教育出版)、『NHK CD BOOK 中学生になるまでに身につけたい! 小学英語 パーフェクト・レッスン』(NHK出版)など多数。

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