吃音症(きつおんしょう)は、第一声がなかなか出せない、会話の途中で言葉が詰まるといった症状を指します。
吃音症は、まだ世間であまり認知されておらず、なかなか理解してもらえないため、人に打ち明けることが難しい病気とされています。
英語を話せるようになりたいと思っていても、「日本語を話すだけでも心的負担があるのに、英語で吃音が出たらどうしよう」と不安な気持ちになってしまうかもしれません。しかし、「英語を話すことで吃音症が治った」という事例もあるようです。
吃音症は世界に7300万人も
日本吃音臨床研究会によると、吃音の主な定義は以下の3つとなっています。
- 音を繰り返したり、つまったりするなどの明確な言語症状がある。
- 器質的(脳や発語器官等)に明確な根拠が求められない。
- 本人が流暢に話せないことを予期し不安を持ち、悩み、避けようとする。
主な症状としては、「お、お、お、おはようございます」といったように最初の言葉を連続して発する連発型(連声型)、「おーーーはようございます」といったように最初の言葉を引き伸ばして発する伸発型、「お‥‥‥」で止まってしまうなど最初の言葉で詰まりその後の言葉が続かない難発型(無声型、無音型)があります。
原因としては、親からの遺伝的要因、幼少期の体験に伴う心理的要因、成長時に吃音の人がいたことによる影響環境要因などがあると考えられていますが、長年の調査研究にも関わらず明確な原因や実態が掴めていない部分が多くあるようです。
吃音の発生率は、人口の1%存在するといわれます。世界人口は2016年中に73億人を超えるとみられます。つまり、世界中の実に約7300万人が吃音症の人なのです。この数字を「意外と多い」と思われる人もいるでしょう。
吃音症は英語で「Stammering symptom」。日本では吃音が2005年から発達障がい者支援法に含まれるようになりましたが、アメリカでは日本の15年も前となる1990年制定の「障害を持つアメリカ人法」で吃音を障がいとして扱っています。障がい者福祉に熱心なアメリカらしさが感じられます。
以上のように、吃音症は英語圏でも一般的に知られる症例。英語で吃音が出るのは特別なことではありません。
吃音症の著名人
「英国王のスピーチ」という映画タイトルをご存知の方も多いのではないでしょうか。この映画は吃音をテーマに、実話に基づいた映画です。
エリザベス女王の父にあたる吃音症のジョージ6世が、言語療法士の助けを借り吃音症を克服してスピーチを成功させます。特定の場面になると、極度に緊張して言葉が出なくなるジョージ6世の姿と、克服までの努力が観る人の共感と感動を呼び、多数の映画賞を受賞しています。
その他にも、次のような著名人が吃音で知られています。
タイガー・ウッズ(プロゴルファー)
幼いころに重度の吃音があり悩んでいたが、色々な治療法に取り組み、そしてゴルフに集中する事で徐々に克服。
ブルース・ウィリス(俳優)
高校時代に吃音に悩まされるが、ステージ上では吃音があまり出ない事に気付き演劇部に所属。役を演じることで吃音を克服。
マリリン・モンロー(女優)
複雑な生い立ちや幼少期の経験から重度の吃音に。「ゆっくり話す」という自分に合った対策方法で大幅に症状を軽減。
スキャットマン・ジョン(ミュージシャン)
幼少期から吃音の克服に努力したが結果は実らなかったが、吃音であることを武器に独自の音楽ジャンルを築き世界的ブレイク。「スキャットマン基金」を設立し精力的に吃音者支援を行った。
その道に長けた人たちも、吃音の克服には骨が折れたようです。克服できた例もあれば、最終的に克服できなかった例も。著名人が吃音と向き合った姿を想像すると「同じ人間なんだ」と親しみが湧きます。
吃音は英語で治る!?
「吃音は英語で治る」といった話を聞いたことはありますか? 吃音で悩む人が洋楽を滑らかに歌えたり、海外で英語を話すと吃音が出なかったりと、個人差はありますがこういった克服例が少なからずあるようです。
これには、主に次の2つの要因が考えられるようです。
1. 脳の領域が違う
「第1言語と第2言語では、各言語が司る脳の領域が違う」という意見。吃音が出やすいクセを持つ領域とは違った領域を活動させて話すことで、滑らかに話せることがあるそうです。
2. 緊張しない
「日本語で吃音が出るのに英語を話すなんて、さらに緊張するだろう」と思う人がいるかもしれません。しかし、このような考え方もあります。「日本語では上手に話せて当然だけれど、英語は上手に話せなくても当たり前だよね」。こう考えることで逆にリラックスでき、吃音が出ずに話せるということがあるそうです。
これらのことから、「日本語を話すだけでも心的負担があるのに、英語で吃音が出たらどうしよう」と不安に思う必要はないのかもしれません。個人差がありますが「英語(外国語)を話す」といった行為は、いつもと違う発音や発声・考えの組立て・体の使い方をするため、吃音の改善に繋がる可能性はあるといえます。