日本でも毎年話題になる流行語大賞。アメリカでは流行語(WORDS OF THE YEAR)を発表している団体がいくつかありますが、最も歴史が長いのは「American Dialect Society(ADS)」です。
2017年の流行語に選ばれたのはあのワード…
今回は、ADSが発表した、2017年のアメリカの流行語をご紹介します。
前回2016年のWORDS OF THE YEARに選ばれたワードは「dumpster fire」。
「dumpster」は、海外の路上でよく見られる大型のゴミ箱、ゴミ集積箱の商品名のこと。「とても悲さんな状況や混沌とした状況を表している」と訳せるdumpster fireは、悲惨で混沌とした大統領選挙と選挙結果を表現したものでした。
過去記事: 2016年のアメリカの流行語は、混乱の選挙戦から
さて、2017年の結果はどのようになったのでしょうか。
2017 American Dialect Society word of the year
Fake news
「fake news (偽のニュース)」というこのワード。どこかで耳にした、という人も多いのではないでしょうか。
【“Fake news” is 2017 American Dialect Society word of the year】
存在感を示す大統領
fake newsは、依然存在感を示すトランプ大統領によって影響力を持ったワードといえます。
トランプ大統領は、自身を批判するメディアを度々「fake news」と罵ってきました。今年に入って、自身のツイッターで「フェイクニュース賞を発表する」と予告した出来事も話題になりました。
この「fake news」というワードについて、流行語に選出したADSは次のように解説しています。
Fake news was first considered by the American Dialect Society a year ago in the voting for the 2016 Word of the Year,
ADS|“Fake news” is 2017 American Dialect Society word of the year より
but at the time its meaning was restricted to fictional or embellished stories presented as authentic news, disseminated for financial gain or for propagandistic purposes.
ADS|“Fake news” is 2017 American Dialect Society word of the year より
In 2017, however, the meaning of fake news shifted and expanded, in large part due to its repeated use by President Donald Trump.
ADS|“Fake news” is 2017 American Dialect Society word of the year より
ADSは、「fake news」はトランプ大統領の「メディアの偏見を暴く」という意図から外れ、広い年齢層に皮肉な意味で使われるようになった、としています。
各賞受賞ワードから見える2017年のアメリカ
ADSは「WORDS OF THE YEAR ( 流行語大賞 )」だけでなく、他にも「クリエイティブ賞」「ハッシュタグ賞」などの賞があります。
以下で、各カテゴリの受賞ワードとノミネートワードを簡単に紹介します。「*」マークがついているものが、カテゴリーの受賞ワードとなります。
WORDS OF YHE YEAR
Alternative facts
大統領就任式に関するスパイサー報道官の虚偽発言を、コンウェイ大統領顧問が擁護した際に使用した言葉。「もう一つの事実」といった意味合い。メディアやSNS上で広く嘲笑された
Fake news *
誤った情報や、デマ情報。トランプ大統領が自身を批判するメディアに対し繰り返し使用してきた言葉
#MeToo
セクシャルハラスメントなど性的被害体験を告白・共有する際、SNSで用いられたハッシュタグ
Milkshake duck
ソーシャルメディアで肯定的に有名になったものの、その後すぐにマイナスの過去が明らかになって人気が失墜する人物
Persisterhood, persister
性差別や、ジェンダーの偏見に直面している女性
Take a knee
人種差別に異議を唱えるためNFL選手が始めた、片膝もしくは両膝を跪き抵抗を示す行為
*一部変更/割愛
POLITICAL WORD OF THE YEAR
Antifa
Anti facismの略。ファシズムや極右勢力に反対する勢力、また政治的抗議運動
Persister, persisterhood
性差別や、ジェンダーの偏見に直面している女性
Take a knee *
人種差別に異議を唱えるためNFL選手が始めた、片膝もしくは両膝を跪き抵抗を示す行為
DIGITAL WORD OF THE YEAR
Blockchain
ビットコイン等の仮想通貨の基礎を支えるために発明された技術
Digital blackface
blackface = 顔を黒く塗り黒人を真似ること。写真の表情や性別・肌の色等を変更できるスマホアプリの機能に関する問題から
Emergency podcast
政治的緊急時のために用意されたポッドキャスト
Get the zucc
Facebookの創設者Mark Zuckerberg氏の名前をもじった言葉
Initial coin offering
仮想通貨を発行することによって、企業が資金調達を行う方法
Ratio
Twitterにおいて、リツィート数に対してツイートへの返答数や割合
Shi◯post *
会話を脱線させるための、無意味で無関係なオンラインコンテンツの投稿
*一部変更/割愛
SLANG/INFORMAL WORD OF THE YEAR
RIP
「ご冥福をお祈りします」という意味の R.I.P (rest in peace)とは異なり、若者が大切なものを壊したり失くしたりした時に使うスラング。日本で使われている「オワタ」等が同じような意味のスラング
Shooketh
shookの変化系。トラウマ的衝撃を受けるといった意味。アメリカのユーチューバーの発言が発祥
Snatched
見た目が (服装やメイクやスタイル) が非常に良いこと。「バッチリ」「イケてる」といった意味のスラング
Wypipo *
「白人」。white peopleの発音を、そのままスペルにしたもの
MOST USEFUL
Angry react, sad react
怒りや悲しみの表現 (フェイスブックのアイコン等)
-Burger
「無意味」や「中身が無いこと」を指す俗語の nothing burgerの派生系。「〇〇〇 burger」と多用された
Die by suicide *
---
Millennial pink
淡くて少しグレーがかった優しいピンク色。ファッション業界から広がったトレンドカラーで多く使われた
*一部変更/割愛
MOST LIKELY TO SUCCEED
Fake news *
誤った情報や、デマ情報。トランプ大統領が自身を批判するメディアに対し繰り返し使用してきた言葉
Stan
熱狂的なファンを指す言葉。アメリカのアーティスト、エミネムの熱狂的ファンの人物名。「STAN」という曲もリリースされている
Unicorn
ユニークな人や物。カラフルな食べ物や飲み物を指す場合も
MOST CREATIVE
Broflake *
批判や嘲笑に対して容易に怒ること、またそういった人
Caucacity
特権を露骨に示したり、型にはまった物事の見方や思考、概念、観念で行動したりすること
Milkshake duck
ソーシャルメディアで肯定的に有名になったものの、その後すぐにマイナスの過去が明らかになって人気が失墜する人物
*一部変更/割愛
EUPHEMISM OF THE YEAR
Alternative facts *
大統領就任式に関するスパイサー報道官の虚偽発言を、コンウェイ大統領顧問が擁護した際に使用した言葉。「もう一つの事実」といった意味合い。メディアやSNS上で広く嘲笑された
Avocado toast
オーストラリア人投資家がテレビ番組内で「若い人達はアボカドトーストを食べるのを止め、家を買うための貯蓄を始めるべき」と発言し、SNSで話題に
Internet freedom
米連邦通信委員会 (FCC) が、インターネット中立性規則の廃止を承認したことにより話題に。グーグルやフェイスブック、アマゾン等のネット企業はネット中立性規則の維持を求めている
Problematic
自分の好きなものが、自分の嫌いな思想や行動をとっている人に汚されていることを指す際に用いる
◯◯◯ WORD OF THE YEAR
Covfefe*
ドナルド・トランプのツイートに使われていた意味不明の単語 (おそらくミスタイプ)
Oh hi Mark, ohimark
2003年に公開し、悪名高い映画としてカルト的な人気の「The Room」のセリフ。その撮影舞台裏を描いた新作映画に、セクハラ問題に揺れる俳優が主役を演じたことで再び注目を集めた
Procrastination nanny
先延ばしにしているタスクに取りかかるようサポートする役を負った人
*一部変更/割愛
HASHTAG OF THE YEAR
#MeToo *
セクシャルハラスメントなど性的被害体験を告白・共有する際、SNSで用いられたハッシュタグ
#NeverthelessShePersisted
トランプ大統領が司法長官に指名したジェフ・セッションズ上院議員の承認をめぐり、エリザベス・ウォーレン上院議員がとった行動。「それでも彼女はやり通した (主張し続けた)」といった意味のハッシュタグ
#ReclaimingMyTime
米下院の女性議員 マクシーン・ウォーターズ氏が財務長官に質問する際「私の時間を返して」と繰り返したフレーズ。女性たちが行動を起こすきっかけとなった
#Resist
トランプ政権に対する「抵抗」を意味するハッシュタグ
EMOJI OF THE YEAR
GOAT (Greatest Of All Time)
im impeach *
woman with head scarf or hijab
thinking face
昨年同様、トランプ大統領関連のワードが目立ちました。
次回のアメリカの流行語も引き続き、トランプ大統領の存在感が示されるのでしょうか。