日本政府は2013年に「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学10校以上に」という目標を掲げ、教育改革を進めています。このほど9月5日に「世界大学ランキング」が発表されました。さて、結果は…。
目標は「トップ100内に10校以上」
ご存じのとおり、教育改革がどんどん進められています。日本政府は2013年に「日本再興戦略-JAPAN is BACK」において、「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学10校以上に」という成果目標を掲げています。
世界でグローバル化が進むなか、日本では産業構造や就業構造に変化が起き、生産年齢人口が急減し、労働生産力が低下しつつあります。
日本の将来の担い手に求められる力が変わりつつあるため、学校教育と学力測定の方法も変化に迫られており、2020年にセンター試験が「大学入学共通テスト」に変わることが決定しています。国語と数学では「記述式問題」が導入され、英語においては民間資格や検定試験を活用しつつ、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が測定、評価されるようになる見通しです。
目標に遠く及ばず…
イギリスの高等教育専門誌「THE (Times Higher Education)」は9月5日、2018年版の世界大学ランキング (World University Rankings 2018) を発表しました。
世界大学ランキング ベスト10 (2018年版)
順位 | 昨年順位 | 大学名 | 国 |
---|---|---|---|
1 | 1 | オックスフォード大学 | イギリス |
2 | 4 | ケンブリッジ大学 | イギリス |
=3 | 2 | カリフォルニア工科大学 | アメリカ |
=3 | 3 | スタンフォード大学 | アメリカ |
5 | 5 | マサチューセッツ工科大学 | アメリカ |
6 | 6 | ハーバード大学 | アメリカ |
7 | 7 | プリンストン大学 | アメリカ |
8 | 8 | インペリアル・カレッジ・ロンドン | イギリス |
9 | =10 | シカゴ大学 | アメリカ |
=10 | 9 | スイス連邦工科大学チューリッヒ校 | スイス |
=10 | 13 | ペンシルベニア大学 | アメリカ |
〜 〜 〜 | |||
46 | 39 | 東京大学 | 日本 |
〜 〜 〜 | |||
=74 | 91 | 京都大学 | 日本 |
トップは2年連続でオックスフォード大学、2位はケンブリッジ大学。1・2位ともイギリスの大学となりました。
ベスト10を国別に見るとアメリカ7校、イギリス3校、スイス1校(同順位があるため11校)と米英でほぼ独占状態。ベスト10の顔ぶれも、同率10位に入ったペンシルベニア大学以外は昨年同様となっています。
国内トップは東京大学の46位、京都大学は74位という結果となりました。昨年のランキングと比較すると、京都大学は91位から17ランクアップしましたが、東京大学は39位から7ランクダウンしています。トップ100内に入った大学はこの2校のみとなり、日本政府が掲げる目標には遠く及んでいません。
さらに、2013年のランキングと比較すると、5年を経て京都大学は54位から74位の20ラングダウン、東京大学は27位から46位の19ランクダウン。
2013年はトップ200に入った大学は5校(23位・東京大学/52位・京都大学/125位・東京工業大学/144位・大阪大学/150位・東北大学)ありましたが、今回は2校。成果目標達成に向かうどころか、後退していることが分かります。
課題は「引用数」と「国際性」?
「世界大学ランキング」は、公開が始まった2004年から、大きく5つの分野(教育力/研究力/引用数 /国際性/産業界からの収入)、13の指標から大学のスコアを総合的に評価しランク付けしています。
各分野・指標の比重
教育力 (学習環境) [30%]
- 評判調査 [15%]
- 教員数と学生数の比率 [4.5%]
- 博士号取得者数と学部卒業生数の比率 [2.25%]
- 博士号取得者数と教員数の比率 [6%]
- 大学全体の予算 [2.25%]
研究力 (論文数・収入・評判) [30%]
- 評判調査 [18%]
- 研究費収入 [6%]
- 研究の生産性 [6%]
引用数 (研究の影響力) [30%]
国際性 (教職員・学生・研究) [7.5%]
- 海外留学生数と国内学生数の比率 [7.5%]
- 外国籍教職員数と国内教職員数の比率 [2.5%]
- 国際協力 [2.5%]
産業界からの収入 (知識移転) [2.5%]
国内大学のランクダウンの背景には、この分野のうち「引用数」と「国際性」がポイントとなっており、被引用論文数の減少などによる「研究の影響力」が少なくなった点や、留学生や外国籍教職員の受け入れがあまり進んでおらず、国際化が遅れていると判断されたと推察されます。
すでに日本の各大学ではグローバル化が推進されているはずですが、多くの大学に対しての運営交付金の減額などの影響からか、グローバル化がうまく進んでいないと見ることができ、今後、助成金の交付等が検討されるかもしれません。
日本政府が掲げる「今後10年間で…」といった成果目標を達成するためには、大学のグローバル化は避けて通れない大きな課題です。それに伴い、個々人における英語力向上の必要性もますます高まりそうです。