イギリスの流行語は日本より少し早い毎年11月に発表されます。流行語は、世相を知る手がかりになります。今回は、イギリス流行語で英語圏の1年を振り返ってみましょう。
日本の新語・流行語大賞「ユーキャン新語・流行語大賞」の受賞結果が12月1日に発表されました。
年間大賞は、25年ぶりとなるリーグ優勝を果たした広島東洋カープの緒方孝市監督が、鈴木誠也外野手の神がかった活躍をたたえた一語、「神ってる」。その他、「ポケモンGO」「盛り土」「トランプ現象」「PPAP」などがトップテン入りしました。
流行語は、その年に誕生し、多くの人々の話題になった言葉が選ばれるため、世相を大きく反映しています。今年は例年以上に、社会ネタから芸能ネタまで幅広い語がノミネート・受賞した年となりました。
ブラックジョーク文化のイギリスでも流行語は人気
皮肉やブラックジョークが文化として根付いているイギリス。当然、流行語大賞は人々の人気で、毎年、うなるような言葉が大賞の栄誉を受けています。
イギリスの流行語は、辞書を出版する「オックスフォード大学出版局」(Oxford University Press)の辞典部門が毎年11月に「Word of the Year」を発表しています。
昨年の大賞は、まさかの (Face with Tears of Joy)、いわゆる「絵文字」です。昨年を含む過去数年間の受賞作をまとめた記事は下記でご確認いただけます。
過去記事:海外の「流行語」から考える、日本人と英語
では、2016年のイギリスの流行語は?
今年の流行語大賞に選ばれたのは、こちら。
Post-truth 「ポスト真実」
一見、何を意味しているのか分かりませんね。
この一語の『truth』は「真実」、『post』は「〜以降、〜後」を指しますが、日本語訳がとても難しいものです。オックスフォード辞書によると「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」とのこと。
2016年のイギリスは、混乱の年でした。EU離脱があり、イギリスにも大きな影響を与えるであろうアメリカ大統領選にはドナルド・トランプ氏が選ばれ…。多くのイギリス人が、「感情的な訴えが政治的に影響を与える」ことを強く実感したと推察できます。
ちなみに、この単語が登場したのは1992年。それが、2016年には使用頻度が前年比2000%まで増加しました。
ウィットに富んだ他の候補
2016年の大賞「Post-truth」と競り合った授賞候補もイギリスらしくウィットに富んでいます。
Adulting「大人的」
責任ある大人らしい行動をすること。
Alt-right「オルタナ右翼」
政治の主流派を拒絶し、意図的に論争のコンテンツを広める、極端に保守的なイデオロギーグループ、または思想傾向。
Brexiteer「ブレグジット支持者」
英国のEUからの撤退に賛成する人。
Chatbot「チャットボット」
特にインターネットを介して、人間のユーザーとの会話をシミュレートするように設計されたコンピュータプログラム。
Coulrophobia「ピエロ恐怖症」
ピエロを極端に、または非合理的に恐れること。
Glass cliff「ガラスの崖」
女性や少数者グループのメンバーが、失敗のリスクが高い困難な状況でリーダーになった状況に関連して使われる。
Hygge「ヒュッゲ」
デンマーク文化の特徴とされる、心地よさと快適さが共生する状態。
Latinx「ラティンクス」
本人や家族がラテンアメリカ出身の人のこと。ラティーノ(男性)とラティーナ(女性)の代替で、中性的表現として使われる。
Woke「ウォーク」
アフリカ系米国人が社会の不公平、特に人種差別を警告するための表現。
どれも尖った表現で、思わずうなってしまいます。グローバル化する世界で、「Post-truth」現象は、イギリスに限ったことではないのかもしれません。さて、日本の流行語は、何に決まるのでしょうか。