イギリスのオックスフォード大学出版局は12月、今年の「流行語」を発表しました。昨年に続き、今年も政治にまつわるワードが多く選ばれています。
毎年12月1日に発表される「ユーキャン新語・流行語大賞」。2017年は「インスタ映え」と「忖度」が選ばれました。若者文化の代名詞ともいえる「インスタ映え」と、政治色が強い「忖度」は、みごとに2017年の世相を体現しているといえます。
グローバル化が進み、国内と国外の動きは切っても切れない関係になりました。若者が力を持ち、政治へ積極的に介入しようとする流れは、海外でもよく見られます。
例えば英語発祥の地イギリスでは、それらが流行語の受賞ワードから読み取れそうです。
イギリスでは、辞書を出版する「オックスフォード大学出版局」(Oxford University Press)の辞典部門が毎年「Word of the Year」を発表しています。
昨年2016年の大賞は、「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を指す「Post-truth」。
EU離脱、ドナルド・トランプ氏の大統領選出ほか、「感情的な訴えが政治的に影響を与える」事象が目立ったことが受賞理由と推察されます。
過去記事:イギリスの流行語「Post-truth」が意味すること
Word of the Year 2017に選ばれた言葉
では、2017年の流行語大賞…「Word of the Year 2017」は?
Youthquake(ユースクエイク)
youth (若者) と quake (地震) でYouthquake (ユースクエイク)。
この言葉は「若者の行動や影響から生ずる著しい文化的、政治的、社会的変化」と定義されています。
なぜ「Youthquake」?
この言葉がビッグヒットとなった背景には、2017年6月に実施され、ヨーロッパ連合からの離脱の方針などが争点になったイギリスの総選挙が大きく関係しています。
この選挙の開票の結果は予想に反し、テリーザ・メイ首相率いる与党・保守党は第1党に留まったものの、議席は過半数を割る結果に。
医療サービスへの大規模支出や、大学授業料の再無償 (奨学金返済の清算・減免)といった、国民不安の解消に向け、希望に満ちたマニフェストを打ち出した最大野党・労働党が若者の支持を得て躍進。また、EU離脱が決まった2016年の国民投票の教訓から若者層の投票率が大きく伸び、若者の力が示された出来事でした。
初めて「Youthquake」というワードを見た方も多いと思いますが、新しく誕生した言葉ではありません。
1960年代にファッション・ライフスタイル雑誌『Vogue (ヴォーグ)』の当時の編集長・Diana Vreeland (ダイアナ・ヴレイランド)によって積極的に使われた言葉とされており、 この年代を彩った若者主導のファッションや音楽の動向が「Youthquake」という言葉を使って数多く紹介されました。
そして2017年、若者の強力な力が政治にまで影響を及ぼすようになったのです。
日本でも近年、政治に関心を持ちSNSなどを用いて発言する若者が目立ってきました。「Youthquake」というワードは、2018年以降の日本の政治にも影響を及ぼすかもしれません。
他の候補ワードリスト
Word of the Year 2017の他の候補は8ワードありました。これらからも、イギリスの世相を垣間見ることができそうです。
Antifa
Anti facismの略。ファシズムや極右勢力に反対する勢力、また政治的抗議運動。
Broflake
批判や嘲笑に対して容易に怒ること、またそういう人。
Gorpcore
機能性を盛り込んだアウトドアファッションのスタイルを指す造語。
Kompromat
ロシア語の「компрометирующий материал」の短縮形「компромат」が由来。政治目的のために人を脅迫したり、不信感を与えたり、操作したりするために収集された情報。
Milkshake Duck
ソーシャルメディアで肯定的に有名になったものの、その後すぐにマイナスの過去が明らかになって人気が失墜する人物。
Newsjacking
イベントやニュースを利用して、商品やブランドを宣伝する方法。
Unicorn
虹色で染められたもの、光り輝くもので飾られた物。特に食べ物や飲み物を指す。
White fragility
人種不平等と不公正に関する情報に直面したときに白人が示す不快感と防衛性 。
Oxford Dictionaries | Word of the Year 2017: the shortlist より