2020年度の教育改革で、大学入試や英語教育が大きく変わります。そこで今回は、これから入試などでも求められる「英語で自分の意見を伝える力」を身に付ける方法を3回にわたって紹介します。
2020年大学入試改革
現在の高校2年生が大学を受験する2020年度(21年1月)から、これまでの「大学入試センター試験(センター試験)」に代わって、「大学入学共通テスト(共通テスト)」が実施されます。
これに先立ち、2017年と2018年には「共通テスト」の原型となる「試行調査」が実施されました。英語試験では、従来のセンター試験に比べると、単に単語や文法の知識を暗記しているだけでは高得点を取るのがより難しくなっています。
様々な情報を比較して分析・判断したり、論理的に考えたりする力が試される問題作りが行われており、新学習指導要領の「主体的・対話的な深い学び」を意識していることがうかがえます。
これから求められる英語力とは
■コミュニケーション能力に必要な4技能をバランスよく
これまでは2技能(読む、聞く)を中心としていましたが、新学習指導要領では、コミュニケーション能力を重視した4技能(読む、聞く、話す、書く)をバランスよく伸ばす英語教育を通じて、自分の考えを英語で発言したり、他の人たちと英語で考えを伝えあったりするよう、これからの英語学習のあり方が示されています。
■目的に応じて、発信・対話する能力
これからのグローバル社会に必要なのは、単なる知識としての英語でもなければ、ただ中身の薄い話し合いを行うための英語でもありません。
広く社会の諸問題についても自身の考えを持ち、これを的確に発信する語彙力、文法力、論理的思考力に加え、他者と積極的に話し合い、議論することができる英語力であり、これまでよりも双方向的かつ高度な英語力であるといえるでしょう。
英語面接をはじめ、スピーチ、プレゼンテーション、ディスカッション、ディベートなど、これから特に必要とされる「英語で自分の意見を伝える」ための具体的な方法を紹介します。
英語で自分の意見を伝えよう!(基礎編)
■シンプルで強力な表現技法「サンドイッチ構造」
話し手である自分だけではなく、読み手や聞き手も混乱することなく、スムーズに内容を理解するためには、シンプルで皆がよく使う形式と手順を踏むことが大切です。
形式と手順が複雑で分かりにくければ、内容が理解しづらくなってしまいます。よく「日本人は英語が下手」と言われますが、英語そのものよりも形式と手順が紛らわしく、結局何が言いたいのか分からない、ということが多いようです。
それでは、自分の考えや主張を伝える最もシンプルな方法を紹介します。それは、「サンドイッチ構造」と言われる、主張と主張で根拠を挟む方法です。
以下に、簡単な具体例を示します。
<例①>
【主張】私が一番好きな季節は秋です。
【根拠】なぜなら、秋は気温もちょうどよく、食べ物もおいしいからです。
【主張】だから、私は秋が一番好きです。
<例②>
【主張】私はデスクトップPCよりもノートPCを購入するべきだと思います。
【根拠】なぜなら、ノートPCは持ち運びができて作業場所を選ばないし、最近は軽量で高機能なものが比較的安価で手に入るからです。
【主張】従って、私はノートPCを購入した方がよいと思います。
このように、サンドイッチ構造では、最初に自身の立場を明らかにした上で、その根拠を述べ、それに続いて主張を再提示することで、主張と根拠の両方を分かりやすく伝えることができます。
■「サンドイッチ構造」を使って意見を言おう!
それでは、サンドイッチ構造を使って、次の問いに対して自身の意見を述べてみましょう。
<例題>
An increasing number of countries have set up laws in the last two decades that require wearing a helmet when riding a bicycle.
Do you agree or disagree with such laws? Why or why not?
例題では、この20年間に多くの国々で自転車使用時のヘルメット着用を求める法律が制定されていることを紹介した上で、あなたはそうした法律に賛成か反対かを尋ねています。
自分の主張、つまり賛成か反対かを表明した上で、その根拠を示し、最後に同じ主張を繰り返すという形、サンドイッチ構造で意見表明してみましょう。
それでは、以下に模範解答例を示します。
<模範解答例>
I agree.
About five years ago, when my brother was 11 years old, he seriously wounded his head when he fell of his bicycle.
If there had been a proper law and he had worn a helmet, he would not have been injured that way.
That's why I agree with such laws.
さて、いかがでしょう。構成をまとめると次のようになります。
【主張】そうした法律に賛成である。
【根拠】約5年前、弟が11歳の時、自転車で転倒して大けがを負った。
もし、きちんとした法律があり、ヘルメットを着用していたら、弟は大けがを負わずに済んでいただろう。
【主張】従って、そうした法律に賛成である。
シンプルなサンドイッチ構造を使うと、意見が伝わりやすくなるのが分かるでしょうか。しかし、なかなかいい根拠が浮かばない、ということも多いと思います。
実は、この模範解答例では簡単な根拠の作り方を紹介しています。それは、事実と仮定を組み合わせる方法です。
「自転車で大けがをした」という過去の事実を提示し、単純にその反対の仮定「もしヘルメットを着用していたら大けがをしなかったのに」を提示するだけで説得力のある根拠が出来上がるというわけです。
他にも「現在、ひどい状況が続いている。もし、この状況が変わらなければさらにひどいことが起きるだろう」のように、現在の事実プラス同じ状況が続くという仮定なども使えます。
■意見を述べる際の根拠の簡単な作り方「事実+仮定」
説得力のある根拠を簡単に作ることができる、事実と仮定を組み合わせる方法とコツを説明します。
【1】「事実」を思い浮かべる
まず、以下の①~③について考える。
①「過去の出来事」(子どもの頃、自転車で大けがをしたなど)
②「現在の事実」(ノートPCは持ち運びができて作業場所を選ばないなど)
③「実際の数字」(日本では毎年4万匹以上のペットが殺処分されているなど)
【2】「使いやすい事実」を決める
次に、上記①②③の中で、「自分が一番ラクに書けそうなもの」や「最も説得力がありそうなもの」を選ぶ。
【3】「仮定」を作る
最後に、【2】で決めた「使いやすい事実」に対して、次の①②③の中から「使いやすいもの」を選ぶ。
①「反対の条件」を仮定する
例)子どもの頃、ヘルメットを着用していなかったので自転車で大けがをした。もしも、ヘルメットを着用していたら大けがをしなかっただろう。
②「同じ条件が続く場合」を仮定する
例)もしも、ヘルメットの着用義務が法律で定められない状態が続けば、今後も多くの人たちが深刻なけがをしたり、生命の危険にさらされたりし続けることになるだろう。
②「具体的な数字」を使って仮定する
例)もしも、日本の全世帯数約5,300万世帯 のうち、わずか1,000分の1世帯以下でも新たに里親としてペットを引き取れば、殺処分されるペットは事実上ゼロになるだろう。
皆さんも身近な例で、主張の後に説得力のある根拠を伝え、最後に同じ主張を繰り返す「サンドイッチ構造」を作る練習をしてみましょう。英語で説得力のある意見を伝える力が確実に伸びていくはずです。
次回は、定番の展開方法や便利な定番フレーズなどを取り上げます。
次回の記事:【中】英語で自分の意見を伝えよう!
おすすめ記事
-
2024/09/13
- 第6回(最終回) 外部検定は利用しないともったいない!
- これまで5回にわたって英語や漢字、数学などの外部検定利用入試についてお伝えしてきましたが、いよいよ最終回です。これまでチェックしてきたポイントをもう一度振り返りながら、外部検定を活用するメリットをまとめてみます。
大学受験を有利に進める!英語外部検定利用入試のススメ
-
2024/08/14
- 【第5回】一般選抜でも外部検定を活用してみよう!
- 前回は、英検®について詳しくチェックしたほか、最近注目の検定にも触れました。この時期は、総合型選抜・学校推薦型選抜の準備が終わって、あとは出願と試験を受けるだけという人も多いのでは? でも、もしものことを考えて、今から一般選抜も準備しておいた方が安心です。今回は一般選抜について外部検定の活用も含めて詳しく見ていきましょう。
大学受験を有利に進める!英語外部検定利用入試のススメ
-
2024/07/12
- 【第4回】英検®深掘り+注目の検定もチェック!
- 第3回記事では、英語外部検定をはじめとする各種検定のオススメをご紹介しました。なかでも「英検®」の準2級・2級が狙い目とお伝えしました。今回はさらにこの「英検®」について深掘りしていきます。加えて、最近注目の英語外部検定であるTEAP®やIELTS ™、コンピューターを使った検定「漢検CBT」についても見ていきましょう。
大学受験を有利に進める!英語外部検定利用入試のススメ