近年、大学入試の英語においてライティング、特に自由英作文の出題が増えています。今回はその自由英作文に絞り、いつでも短時間で効率的に高得点を狙うことのできる方法を、前編・後編の2回にわたって伝授します。
1. 自由英作文(エッセイライティング)の型
まずは「型」から入りましょう。基本の型と「その使い方」が分かると、英作文の方針が立てやすくなります。
① 提起: 前提条件・テーマの確認。「…の状況にある」「…すべきなのだろうか」
② 譲歩: 「確かに…という面もある」のように、主張と反対の立場に理解を示す。
③ 主張: 「しかし、…である、と思う」と、自身の主張を論じる。
④ 根拠: 「なぜなら、…」と、主張を支える事実や証拠となるものを提示する。
⑤ 具体例: 「例えば、…」と、提示した根拠の具体的な事例を挙げる。
⑥ 結論: (=主張の再提示)「従って、…」と、主張を再度提示する
上記①~⑥で最も重要、つまり、絶対に欠いてはいけないのは、③主張と④根拠です。自由英作文ではほとんどの場合「指定語数」があります。指定語数が50語程度と少なめの場合は、「主張+根拠」だけで十分です。指定語数が多くなる場合は、「主張+根拠」を軸に他の要素を加えていけば「無理に語数をふくらませる」必要はなくなります。
以下、組み合わせの例です。
■ A. 主張+根拠+結論(主張の再提示)
「私は○○だと思う。なぜなら、××だからだ。従って、○○なのである」
⇒この方法は「サンドイッチ構造」と呼ばれ、欧米では子どもの頃からこのように意見を述べるよう鍛えられています。「私は冬が一番好きです。なぜなら、冬にはクリスマスがあってサンタがプレゼントをくれるからです。だから、私は冬が一番好きです」
主張を繰り返すだけでよいので、余計なことを考えなくても語数と説得力が増します。
■ B. 譲歩+主張+根拠
「確かに、△△の面もある。しかし、私は○○だと思う。なぜなら、××だからだ」
⇒「譲歩」は、自分と反対の立場や意見に対して一定の理解を示し、自身の見方に偏りががないことを示す効果があります。また、単純に「主張の反対」になるので、主張を考えれば、ほぼ自動的に頭に浮かび、時間がかかりません。
基本となるAとBを合わせて「譲歩+主張+根拠+結論」とすれば、さらに長くできます。このように「主張+根拠」を軸に、上記①②⑤⑥を順番に加えれば、簡単に語数を「もっと長く」できます。詳しくは後述します。
2. 「根拠/具体例」の作り方のコツ
「主張は浮かんでも根拠が浮かばない」「浮かんでもまとめられない」こともありますね。ここでは、簡単に「根拠を作るコツ」を紹介しましょう。
■ A. 実証的論証(実証的根拠)
言葉は難しいですが、単純に「現在や過去の事実」「出来事」「実際の数字」などを挙げるだけです。
例えば、「制服に賛成か反対か」で「反対」の主張をする場合、「汚すと替えがなくなる」「破けて修理に時間とお金がかかった」「制服代が高い」「一式30万円かかった」など、「事実・出来事・数字」を軸に置けば、すぐに浮かんできますね。
■ B. 仮説的論証(仮説的根拠)
これも単純です。「実証の反対」を仮定するだけです。「もし制服でなければ、汚れても他の手持ちの清潔な服を着ればいい」「制服でなければ、30万円もかからなかっただろう」といった具合です。実証と仮説を組み合わせると説得力がぐっと増します。
■ C. 3つの「時」を使う
これも「現在、過去、未来」の3つの「時」から根拠を考えるだけです。現在のことに思考が集中しがちですが、ちょっと視点を過去や未来に移すと根拠の幅が簡単に広がります。
例えば、「消費税の引き上げに賛成か反対か」で「賛成」の場合、「高齢化が始まる前は多くの労働人口で少ない高齢者を支える構造だったため、その時代には必要がなかった」「今後、高齢化はさらに進行する。さらなら社会保障費の財源が必要になる」というように、過去と未来の視点を加えれば、一気に「それらしく」なりますね。
■ D. 複数の「人称」を使う
1人称、2人称、3人称ごとの視点とその効果的な使い方を紹介します。 “I think…”や “(I think) we should…” ばかり、つまり1人称の視点ばかりになって「詰まってしまう」ことがありますね。こういうとき、“if you…, then you'll find…” のように2人称を使うと「“I think” の呪縛」から解放されます。
また、3人称は家族・友人・学校・地域などの「身の回り」から、他の地域、他の分野、より広い「社会」へと視点を広げていくと、様々な「根拠のネタ」が見つかります。
3. 「結論」の作り方のコツ
上記1.で示した通り、結論は「主張の再提示」です。なので、既に言っていることを繰り返せばいいだけなので簡単です。もちろん、少し言い方を変えて文章の完成度を上げられればさらに良いですが、そのまま繰り返しても構いません。
むしろ、大事なのは「組合せによる語数調整ができる」という点です。以下、大別して4つのパターンを紹介しましょう。
■ A. 主張のみ:「従って、〇〇なのである」
主張だけを提示して終われば、10語程度で済みます。
■ B. 根拠+主張:「従って、××なのだから、やはり〇〇なのである」
最後に「20語前後が欲しい」場合、前で示した根拠と主張を簡潔に再提示すれば、ここでアイディアを出さなくても簡単に20語前後を増やせます。
■ C. 譲歩+主張:「従って、△△ではあるが、やはり〇〇なのである」
Bとほぼ同様です。ただし、譲歩をまだ提示していなかった場合は、Although S Vなどを使って「主張や根拠の反対」を示せば、20~30語程度を増やすことができます。
■D. 譲歩+根拠+主張:「確かに△△ではあるが××である。従って、〇〇なのである」
これは、上記のBとCを組み合わせたものです。これを使えば、40~50語程度を増やすことができます。
4. ディスコースマーカー(談話標識)
これは、単に「次にどういうことを話すか」の目印の役割となるもので、文章の見栄えをよくしたり、メリハリをつけるのに効果的です。よく使うものを紹介しましょう。
① 譲歩でよく使うディスコースマーカー
Some people say …
some以外のmany, mostでも構いません、「複数」であることが効果を高めます。Many scientists believed …など。
It seems that …
「…のように見える」と断定を避けます。It appears, Seemingly, Apparentlyなども同様です。
It is true that …
「確かに…」と一旦反対の立場を認めておきます。No doubt / Undoubtedly, True, Of course, なども同様です。
It is possible that …
「可能性」を認めておきます。助動詞may, might, can, couldなども多用されます。
Although S V, In spite of O …
譲歩の定番。「~ではあるが、だけれども」
② 主張でよく使うディスコースマーカー
but, yet, however などの逆接が代表的
I think … とまっすぐ主張を展開するもよし、また、上記の譲歩表現と呼応させて、It is true that …. However, it is also true that …. や、Some people say …. Yet, it can safely be said that ….のように組合せるのも効果的です。
③ 根拠でよく使うディスコースマーカー
First … Second[Another] … Finally … ⇒順番に根拠を提示する方法。
In addition, Moreover, Besides, What is moreなど ⇒「さらに」と追加。
In fact(前段の譲歩を受けて)、as a matter of fact(より客観的に) ⇒「実際…」の意。
In short, in a word / in other words, to put it another way ⇒言い換えて根拠を補強。
④ 具体例でよく使うディコースマーカー
For example, for instance 「例えば」これは定番ですね。
Last September, The other day, In 2014 など具体的な「時」を表す言葉。
In America, At the airport, In my town など具体的な「場所」を表す言葉。
Winston Churchill said …, According to Dr. Yamanaka at Kyoto University など具体的な人物や団体名の発言や行為などを表す言葉。
⑤ 結論でよく使うディスコースマーカー
In this way, Thus, Therefore 「このように、従って」などの定番表現。
In conclusion「要するに、最後に」, All in all 「(結局)全体的に見れば」In the long run「長い目で見れば」など、締めくくりを表す言葉。
後編では、ここまでのポイントを踏まえた実践例や採点の方法、採点基準などを紹介していきます。
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