AI(人工知能)の進化が目覚ましく、2045年には人類の知能を超えるコンピューターが誕生する「シンギュラリティ」(技術的特異点)を迎える、ともいわれています。AIによる翻訳機能も進歩しており、今後外国語の学習は不要になるのでしょうか?
AIによる翻訳機能が進歩
社会がグローバル化する中で、国は「グローバル人材」の育成を掲げ、世界の共通語である英語の習得が重要視されています。
一方で、AIによる翻訳機能が進歩しています。進歩の背景には、この数年でAIが翻訳するのに必要なインターネット上のデータを取得する技術や環境が進化したこと、スマートフォンやタブレットなどの性能が向上して、多くの人が翻訳アプリを使うようになってきたこと、などがあるようです。
AIによる翻訳を可能としたデバイスやアプリは、利用が進んでいるものや、これから普及していくであろうもの、研究や実証実験が進められているものなど下記のようなものがあります。
ili(イリー)
2017年1月に公式発表され、大きな注目を浴びている世界初のウェアラブル翻訳デバイス「ili(イリー)」。
独自技術の瞬間翻訳で最速0.2秒の翻訳を実現したiliの大きな特長は、インターネットに接続する必要がないこと。通信状態を問わないため、旅行中でも使いたい瞬間に使えます。また、使用環境において使用頻度の高い固有名詞を自由に追加することが可能な「オリジナル辞書追加機能」や、使用頻度の高い単語やフレーズを閲覧できる「翻訳データ抽出機能」があります。
日本語⇔英語又/中国語に対応、2017年夏頃には韓国語にも対応する予定となっています。2017年6月より法人向けのレンタルが開始となっており、個人で購入できる日はもう少し先となりそうです。
Google翻訳
みなさまご存知「Google翻訳」。Google翻訳は2016年11月より、「ニューラルネットワーク」という脳の仕組みを模倣したアルゴリズムを活用し、従来より自然な翻訳結果が表示されるようになっています。
特筆すべき機能は、2017年1月のアプリアップデートでようやく英語⇔日本語の翻訳に対応した「リアルタイムカメラ翻訳」。カメラを起動し表示した画像(映像)をリアルタイム認識し画面上で翻訳してくれます。リアルタイムカメラ翻訳の翻訳精度・読み取り精度はまだ完璧とは言えませんが、今後改善が施されていくでしょう。
VoiceTra (ボイストラ)
情報通信技術の研究開発や事業支援などを行っている独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)は、旅行会話用の音声翻訳アプリの開発を進めています。この「VoiceTra(ボイストラ)」は話しかけると外国語に翻訳してくれる音声翻訳アプリ(iOS, Android)。見やすい画面で操作も簡単、翻訳結果が正しいかどうかも確認できる。翻訳できる言語は31言語あるとのことです。
NariTra (ナリトラ)
こちらもNICTが開発した多言語翻訳エンジンを使用。成田国際空港株式会社により提供されています。「NariTra (ナリトラ)」は、成田国際空港に関連する固有名詞や観光地の名称、駅名、商品名などを登録することができ、空港や旅行先での利用に特化しています。対応言語は日本語⇔英語、中国語、韓国語。
外国語の学習は不要となる?
便利なAIの翻訳機能ですが、いずれも精度は完璧とはいえず、これからの技術向上が望まれます。目覚ましく進化するAIによって、まもなく外国語の勉強は不要になるのでしょうか。
そのような未来がいつかはやってくるかもしれません。しかし、日本語からの翻訳はかなり難しいといわれています。日本語は、主語があったりなかったりする、同じような意味を伝える表現が多彩、多様な方言など、日本語から完璧に翻訳する技術の確立はかなり遅れることが予想されます。
AIによる翻訳機能は便利ですが、まだ精度が完璧ではない翻訳機能を使いこなすためにも、外国語を学習し、翻訳機能を予備的に活用するのがベストなのではないでしょうか。何より、自分の知識や表現方法で、海外の方と直接コミュニケーションがとれるという楽しみが待っています。